企業概要
ブリヂストンは、自動車・飛行機・バイク向けのタイヤ製造を主力とする大手自動車部品メーカー。1930年に日本足袋のタイヤ部門として発足後、1931年にブリッヂストンタイヤとして分離独立。1988年には米ファイアストンを買収、米州エリアでの地位を確立することに成功した。仏ミシュランと並んで世界屈指の総合タイヤメーカーとして君臨しており、タイヤでは世界首位級。祖業はタイヤだが事業多角化が進んでおり、自転車・スポーツ用品・自動車部品・工業用資材なども製造している。
・世界3大タイヤメーカーの一角でブランド力が高い、事業多角化も進展
・COVID-19影響による業績悪化から復活、初の売上高4兆円突破を達成
・平均年収は749万円だが30歳前後で裁量労働制に、僻地勤務が多い
就職偏差値
69(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
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業績動向
✔売上高と営業利益
ブリヂストンの売上高は2020年を底に回復傾向にあり、直近の2023年には4.31兆円に到達して過去最高を更新*1。営業利益も、2020年を除けば3,400億~4,800億円ほどで安定的。
*1:2022年はインフレ(原材料費・エネルギー費・労務費・海上運賃の高騰)によるマイナス影響が甚大であったが、販売価格の強気な値上げと高付加価値商品の強化によって売上高が急回復。
✔セグメント別の状況
ブリヂストンは日本事業(日本国内)、米州事業(アメリカ・カナダ・メキシコなど)、欧州他事業(ヨーロッパ・ロシア・中近東・インド・アフリカなど)、アジア事業(アジア・中国・大洋州など)、その他事業の5事業を有する。
ブリヂストンの売上高の柱は米州事業であり、売上高の約45%・利益の約49%を占める稼ぎ頭。日本国内の事業規模も意外と大きく、米州に次ぐ第2位である。反面、ヨーロッパ・アフリカ・アジアにおける事業規模はそれほど大きくはない。
✔最終利益と利益率
ブリヂストンの純利益は、2,400億~3,500億円ほどで長期的に安定している。最終赤字に転落することは稀であり、2020年の最終赤字は69年ぶり*2。営業利益率も2020年を除けば10%以上で安定しており、大手メーカーとしては良好な水準。
*2:COVID-19感染拡大による外出自粛の影響でタイヤ販売が世界的に急減。更に、中国やロシアなど海外事業の減損損失や事業構造改革費用などで1,588億円の損失が生じたことで最終赤字に転落。COVID-19という特殊事情が大きい。
✔自己資本比率と純資産
ブリヂストンの自己資本比率は直近で61.8%と相当な高水準であり、大いに堅実な財務体質を築いている。純資産は2020年を底に堅調な増加を継続しており、2022年には3兆円を突破。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ブリヂストンの平均年収は直近で748万円であり、タイヤ業界において首位の給与水準を誇る。大卒総合職であれば、30歳で650万~750万円ほど、課長職レベルで950万~1,300万円ほど。ただし大卒総合職は30歳頃から裁量労働制へと移行し、残業代は不支給となる。
✔従業員数と勤続年数
ブリヂストンの単体従業員数は長期的に1.3万~1.4万人の水準で安定的に推移している。平均勤続年数は緩やかな増加基調にあるが、直近でも15.2年と大手メーカーとしては普通の水準に留まる。
総合評価
企業格付け:A
■業界ポジション
仏・ミシュランタイヤおよび米・グッドイヤーと並ぶ、世界3大タイヤメーカーの一角。とりわけ日本国内におけるブランド力と知名度は断トツ首位であり、同業のダンロップ・ヨコハマタイヤ・トーヨータイヤなどに大差をつけて独走。タイヤは自動車部品には珍しく、ブランド力が極めて重視される商品であるため、新興国タイヤメーカーの攻勢にも強い。
■業績動向
やや好調。2022年以降の世界的な物価上昇に押されつつも、販売価格の強気な値上げと高付加価値商品の強化によって売上高・利益いずれも好調。2020年にはCOVID-19感染拡大に伴う外出自粛によってタイヤ需要が冷え込み、実に69年ぶりとなる純損失転落を経験したが、そういった特殊な事業環境でもない限りは売上高・利益はかなり安定的である。
■財務体質
極めて良好。自己資本比率は直近で61.8%と相当な高水準であり、負債に依存しすぎない事業運営ができている。手元の現預金は7,000億円を上回っており、手元資金も潤沢。そもそも安定的な利益確保にも強い企業であるため、これほど堅実な財務基盤が必要かとすら思えるレベルである。倒産リスクとはまず無縁。
■EVシフトに強い
昨今の急激な電気自動車シフトによって自動車業界は100年に1度と呼ばれる大変革期にあるが、タイヤは自動車が地上を走行する限り絶対的に残り続ける部品であるため安泰。それどころか電気自動車はモーターによって低回転から大きなトルクを発生するため、ガソリン車以上にタイヤの摩耗が早く、かえってタイヤ業界の追い風になる可能性すら秘めている。
就職格付け:A
■給与水準
給与水準は直近で平均年収748万円だが、これは現業職を含めた従業員1.41万人の平均年収。大卒総合職であれば、30歳で650万~750万円ほど、課長職レベルで950万~1,300万円ほどになる。ただし、30歳前後で上級職試験に合格すると裁量労働制へと移行するため、残業代で稼ぐことができなくなる。
■福利厚生
良い。大手メーカーらしく独身寮・社宅が多数整備されており、格安で入居できる。2024年までは東京・六本木の超一等地に社宅を保有していたが、同年に634億円で売却されてしまった(社宅の売却額が634億円というのはまさしく桁違いの優良物件である)。ただし、勤務地には下関・鳥栖・防府・那須塩原などの過疎地域が目白押しであるため、勤務地を重視する場合には要警戒。
■キャリア
2022年から職種別採用を導入。事務系職種は営業・マーケティング・SCM・調達・財務・法務など、技術系職種は研究開発・モノづくり・ITなど。2021年にはジョブ型の人事制度へと移行しており、職種志向が強くキャリアプランが明確な優秀人財の確保に努めている。が、実際には職種間異動もまだある。工場勤務の場合には過疎地域から過疎地域への転勤が多くなるのが痛い。